今回は、質権と留置権の違いを、表にまとめたいと思います
この2つはとても似ていますので、意識して比較しないと、なかなか違いを発見することができません
質権 | 留置権 | |
① 相当の担保の提供 による消滅請求 | × | 〇 |
② 不動産を目的とした 場合の登記の可否 | 〇 | × |
③ 目的物を債務者に 返還した場合 | 第三者対抗要件 がなくなる ※動産質の場合 | 消滅する |
④ 物上代位性 優先弁済権 | 〇 | × |
解説
①相当の担保の提供による消滅請求
質権
100万円の車を担保(質)に入れて、100万円を借りる
→ 「担保(車)」と「借りる金額」が一致している
留置権
100万円の車のバンパーの修理を依頼
修理費用5万円
→ 「車(担保)」と「修理費用の金額」が不一致
このような場合、債務者(車の所有者)は、5万円相当の他の担保を提供して、車の返還を請求することができます
なぜなら、たった5万円の修理費用のために、100万円の車を返してもらえないのでは、つり合いが取れないからです
②不動産を目的とした場合の登記の可否
民法には、いくつかの物権が定められていて、そのほとんどが登記できます
しかし
留置権は、登記できません
これは、理屈ではなく、そのまま暗記した方がいいと思います
③目的物を債務者に返還した場合
質権
目的物を債務者に返還した場合、質権自体は消滅しません
つまり、当事者(債権者・債務者)間では質権は存続しています
しかし、第三者に質権を対抗(主張)することができなくなります
したがって、目的物が
債権者(質権者) → 債務者 → 第三者
と渡った場合、債権者は、第三者に対して、目的物の返還を請求することができません
留置権
留置 = 留め置く
つまり、留置権は、目的物を留め置いて、初めて成立・存続することができる権利なのです
目的物を留め置いていないのに、成立するわけがありません
④物上代位性優先弁済権
留置権は、他の物権と性質が異なるものが多いです
つまり
仲間外れ
なのです
↓
登記 ×
物上代位性 ×
優先弁済権 ×
【問題を解くテクニック】
問題を解いている時に、どうしてもわからない場合は
留置権は他の物権とは違ったな
ということを思い出せれば、解くことができるかもしれません
※ただし、注意点が1つあります
留置権者が、目的物を競売した場合の優先弁済権 → なし
目的物が、果実(例えば、利息)を生じた場合の優先弁済権 → あり
【理由】
果実は、少額であることが多いため、他の債権者を害する可能性が低いからです
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